メタバースとは、通信ネットワーク上に作成された仮想空間のことです。
ユーザーはその空間内で、さまざまなものを見聞きしたり、
自由に動き回ることができるのです。
昔からインターネットで「掲示板」や「チャット」などで、
ユーザー同士がリアルタイムに
コミュニケーションを取れる場がありました。
メタバースはそれのハイテクノロジー版で、
頭部にゴーグルなどをつけ、
視界をその仮装空間のみ制限することにより、
あたかもその場にいるような臨場感を味わうことも可能です。
このメタバースは、まだ活用しきれているとはいえません。
しかし今後は、高齢者に対しメリットが多いため
普及が進められると言われています。
高齢者と言えど、長い間、プライベートや仕事で
デジタル機器を生活の中で活用してきた世代です。
この世代はデジタルシニアと呼ばれ、増加する一方です。
現在の高齢者の過ごし方としては、
ウォーキングや園芸、写真撮影や体操が一般的です。
もちろん若い頃からの趣味である映画鑑賞や読書、
バイクやサーフィンなどを楽しんでいる方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、老化が進むにつれ、身体能力の低下や持病の悪化など
どうしても変化に適応せざるを得なくなる状況に陥る場合もあります。
また収入の低下や、一人暮らしによるコミュニケーション不足など、
老後はさまざまな問題や心配を抱えているのも現状の一つです。
メタバースは高齢者にとって、
これらを解消しつつ、また新たな余暇として、
おおいに利用できるメリットを有しているのです。
それでは高齢者に対する
メタバースの利点について、ご紹介いたします。
自宅でOK
老化により、外出がどうしても困難になる方が増えていきます。
特に足はヒザなどに故障を抱えやすく、移動が困難になります。
メタバースは自宅のリビングで、友人たちと会ったり、
いろいろなイベントに参加できるのです。
交通費も移動時間も不要であるため、
さまざまな負担を軽減してくれるのです。
どこで休むか、具合が悪くなった時にどうするか
そういった心配からも不要となるため、
出かける際のさまざまなわずらわしさからも解放されます。
動けなくてOK
老化に限らず、人はそれぞれ身体能力の差があるものです。
走るのが苦手、泳げない、といったものから、
歩行が困難ある、片手が不自由である、お腹を壊しやすい……
メタバースはそういったものがほとんど関係なく過ごせます。
(もちろん視力など、多少は必要となってきます)
現実世界と見間違うような仮想空間上において、
現実の状況とは関係なく、自由に動き回ることができるのです。
それどころか「風のように早く走ってみたい」
「魚のように海中を泳ぎ回りたい」
「空を鳥のように飛び回ってみたい」
といった体験も、メタバース空間においては可能になるのです。
また、すでに実際に行われていることですが、
バーチャルエクササイズも行えるため、
日々の運動不足解消や、簡易的なリハビリなど
気軽に自宅でできるのです。
既存の運動ゲームは、ひとり黙々とテレビと向き合うものですが
メタバースは複数の人とともにヨガのレッスンを受けたり、
友人と励まし合いながら筋トレすることも可能です。
外見も選べ、お洒落も楽しめる
外出が不要とあり、お洒落を楽しみたい人は残念かもしれません。
しかしメタバースは、自分の外見を好きなものに変えられ、
服装や小物だけでなく、顔の造形やスタイル、肌や目の色まで
自分で自由に選択でき、しかも気分に合わせて変更できるのです。
これは”アバター”とよばれる、ユーザーの代理キャラクターで
自分の作り上げたアバターを操作して、バーチャル空間を過ごすことになります。
当然、ほかのユーザーからはアバターでの姿のみ認識され、
実際の姿は全く見えないため、個人情報も守られます。
そして自分のコンプレックスなどからも解放され、
”自分のなりたかった姿”になれるのです。
会話が出来る
近年問題になっているのが、
独居老人の抱える孤独についてです。
寂しさとしての問題だけでなく、会話は頭を使うため、
その激減は老化を促進してしまうと言われています。
メタバースなら、気軽に遠方の家族や友人と待ち合わせて会話したり
イベントに参加したり、講座などを受講することで
全く知らない人とも会話が出来、生活に刺激を与えてくれることでしょう。
さらには今後、自分の得てきた知識や体験を生かせる場になり
もう一度、社会貢献したり、収入を得ることができるケースも
生まれるかもしれません。
デジタル機器の取り扱いも簡単
高齢者に、メタバースのための機器を取り扱うのは
難しいと思われるかもしれません。
しかしながら、現在の60代は現役時代から
コンピューターや携帯機器を扱っています。
今後増え続ける高齢者は、むしろそういったものを”作ってきた”側です。
そもそもVRといったメタバースの機器は
小学生もゲームなどで活用しているものです。
基本は装着し、ボタンを押す。
スマートフォンよりも直感的に操作できるのではないかと思われます。
むしろ機器の取り扱いよりも心配なのは、
インターネットにおけるリテラシーやマナー、
トラブル対応といった、内面的な問題かもしれません。
これは導入前に、事前にしっかりとご本人が学んでおく必要があります。
新しい体験ができる
経済的、または身体的な問題によって
新しいことを始めるのが困難な方もいらっしゃいます。
しかし人生は意外と長く、まだまだ何もせずに過ごすには
あまりにももったいないかと思われます。
メタバースなら、どのような状況の方も、
さまざまなイベントへの参加が可能なのです。
いつか行ってみたかった国や観光名所を訪れることもできます。
(VR旅行アプリ「Google Earth VR」が有名です)
音楽イベントや美術館、展覧会といった各種イベント、
趣味や勉強の講座を受講するなど、
利用法や楽しみ方はいろいろです。
もちろん自分の趣味(絵画や俳句など)を公開する場として
活用することも可能です。
メタバースの最大の特徴である”気軽さ”を生かし、
自宅で、環境や状況に囚われず
自分らしいメタバースの楽しみ方を見つけていただけたらと願います。
今後の課題
これはメタバースのユーザー側ではなく、
サービスの場を提供する企業や国の対策として
今後、ぜひ期待することです。
高齢者向け施設やリハビリセンターなどで積極的に導入してもらう
すでに導入している施設も少なくありませんが、
今後はさらに積極的に増やしていくことを願います。
高齢者向けのイベントを増やす
税や年金、相続について学べる講座や、
詐欺被害に対する注意喚起などを
メタバース上で行ってもらいたいです。
さらに高齢者と若年層が一緒に楽しめる企画など
メタバースが良いコミュニケーション場になれるよう
より楽しいイベントを用意してもらえたらと願います。
また、以前は井戸端や街の集会所で行われていた情報交換を
メタバース上でできるようになれば、
行政的にも企業側としても、自治体の状態や、
人々のニーズを把握することができるのではないかと思われます。
高齢者のメタバース参入を推進する案内人や相談役を周知する
誰か詳しい人、困った時に相談できて頼れる存在が
メタバースの導入から定着までに必要となります。
もちろんメタバース空間での案内人は必要ですが、
現実のほうでも、”電源が入らない”
”イベントに参加できない”といった相談から、
トラブル対応までサポートしてくれるアドバイザーを増やすことで
安心して参加できる人が増えると思います。
高齢者の持つ知識や体験を生かせる場を増やす
せっかくの知識が無駄にならないよう、
また新たな需要を発掘する機会にもなり得ます。
メタバースを「やっても何の利もない」と思う高齢者に対し
自分次第では経済的なメリットが得られるという面を
理解してもらえたらと思います。
ハードウェアの操作を容易にし、価格もお求めやすいものに
当分の間は難しいと思われますが、
メタバース用に機能を限定するなどして、
価格を下げ、操作性を容易にしていただけたらと思います。
今後は高齢者だけでなく、
身体的な理由によって行動を制限されている人々が
メタバース空間によって、新たな楽しみを見つけ、
さまざまな生き甲斐や価値を得てほしいと願っています。