漢方薬入門

漢方薬入門 薬・サプリメント
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漢方薬のすすめ

大昔に比べ、現代の日常生活では、お薬はとても身近で気軽なものとなりました。
病気や体調不良に効果のある「薬剤」を、誰もが容易に入手できます。
人類が時間をかけて、さまざまな症状などに対する有効な成分を
ひとつひとつ研究し、臨床してきた成果と言えます。

普段お薬を手に入れる場合、病気の診察をした病院で処方されるか、
症状が軽い場合はドラックストアで市販薬を購入するか、だと思われます。

その種類は多くが西洋薬(新薬)であり、成分は化学合成された物質がほとんどで
実験的に研究された薬理作用(効果)をもたらしてくれます。

しかしそれが体質に合わない場合や、
「病院へ行くほどでもないが気になっている症状」がある場合、
漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。

漢方薬は西洋薬に対し、有効成分を含んだ複数の天然素材を組み合わせたもので
長い年月をかけ、経験的に効果があると認識された作用をもたらしてくれます。

今回は登録販売者として、セルフメディケーションの一環として
漢方薬にあまりおなじみのない方に向け、
使いやすいものや使用上の注意など含めてご紹介していきたいと思います。

漢方薬とは

漢方薬とは長い年月の間、生薬の種類や組み合わせ、その分量などを調整し、
効果のある「薬」として確立されたものです。

漢方を用いた医学は、病気の原因や症状に注目しその改善を目指す西洋医学と異なり
人間の心身を総合的にとらえ、バランスを調整し治療を行うという考え方を持ちます。
そして人間が本来持っている自然治癒力を高めていく方法なのです。

漢方の治療原則は、過度に熱を持っているなら冷却し、冷たすぎる場合は温め、
不足しているものは補い、過多の場合は減らし、正常なバランスを目指します。

なお漢方薬というと中国、というイメージがあるかもしれません。
確かに中国を起源としますが、一般的に漢方薬とは、
日本国内で長い年月をかけて培われた知識や技術が基になっている医学です。
漢方医学とは別のものとし、中国で発展したものを中医学、韓国のものは韓医学と呼ばれ
みな起源は同じですが、その後の研究内容・結果などが異なるため、
漢方医学とは別物として区別されています。

漢方薬の原料

漢方薬で使われる生薬は、自然界で入手できるもの、すなわち草や木、
動物や鉱物といった、天然由来の原料からできています。

植物からは多大な種類の木の葉や皮、実、茎、根っこなどさまざまな部位を、
動物はそれからとれる油や肝などを使用します。
鉱物もというと驚くかもしれませんが、石膏や牡蠣の殻が薬効を持っているのです。

それらは「生薬」と呼ばれ、加熱したり乾燥するなど加工して使用します。
もちろんこの生薬は単体でも効果を持ちますが、
漢方薬として処方される場合は、多くの生薬を組み合わせたものとなります。

風邪の時にはネギを食べると良い、ショウガは体を温める、といった話を
聞いたことがあるかと思います。

それをあまたの天然素材を用いて、人間や動物が摂取した様子などを観察し
長い年月をかけ、おおよその効果を実証できたものを生薬として認定したのです。

漢方薬は体内バランスの調整のために、いくつかの生薬を組み合わせて作られ、
それによって体質や症状を根本から改善していくことを目指します。

効果があるの?

私も学ぶ前は「自然由来のものを使っているから効果が穏やかなのかな?」
「西洋薬がなかった頃、服用して良くなったものをお薬代わりにしていたのかな?」
などと、漢方薬に対し、だいぶ失礼!な認識を持っていました。

同じく、西洋薬と比較し、漢方の効能に対する疑問を持つ方や、
または効果がなかなか出てこないのではないかと思われる方もいるかもしれません。

しかしながら漢方薬は、漢方医学に基づいて処方されるれっきとした医薬品のことです。
もちろん医師によってはこちらを選択され、病院でも処方されています。
何千年もの歴史をもつ、治療効果のある医薬品として用いられているのです。

効き方についても、短時間や翌日には効果を得られるものもありますし
常用することで体質を徐々に改善するものなど、症状にあわせてさまざまです。
(種類としてはやはり徐々に効果を得られるものが多いかもしれません)

私としては、もちろん効果を期待して服用するのも良いですが、
セルフメディケーションがこの先の重要な課題となっている昨今、
「自分で出来る症状の緩和、不快な体質を改善」することを目指して、
漢方薬を活用していただければと思います。

漢方薬の種類

漢方薬の種類は、その生薬の組み合わせによるため、大変数が多いです。
国で承認されたものは294処方で、そのうち医療保険が適用するのは148処方あります。
そのため病院で漢方薬を希望する場合、担当する医師に
「健康保険が適用する漢方薬を飲みたい」とお伝えする必要があります。

あまりにも多いので、今回は有名なもののみご紹介します。

葛根湯 (かっこんとう)は最も有名な漢方薬と言えます。
風邪の初期によく使われ、「風邪かも?」と思ったらすぐに服用するのがお勧めです。
高い効果を感じられるため、私もですが医療関係者でも薬箱に常備する人が多くいます。

 葛根湯は初期向けなのですが、すでに進行が進んだ風邪には「桂枝湯(ケイシトウ)」を
風邪をこじらせてしまった場合は「柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)」を服用します。

体質的な改善によく用いられるのが、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。
疲労倦怠や食欲不振に薬効があり、体力虚弱、気力・元気がない、
疲れやすいといった症状にお試しください。

女性の悩みにもよく処方されます。
婦人科三大処方と呼ばれる、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・
加味逍遥散(かみしょうようさん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の3種は、
生理不順や生理痛、更年期障害の軽減に効果があります。

漢方は子どもにも処方されます。病理的な症状はもちろんですが
神経過敏やイライラといった心身症的なものに対しても効果を得られます。
 最近、学生の間で増えている起立性低血圧(朝起きられない)には苓桂朮甘湯を
小児の夜泣きやかんしゃくには甘麦大棗湯、
イライラ、怒りやすく攻撃的な性格には抑肝散が、よく処方されます。

その種類や効能は本当に多いため、ご紹介しきれるものではありませんが
「漢方薬 〇〇なとき(症状)」などで探してみると、
自分が飲んでみたいもの、家族に良さそうなものがみつかるかもしれません。

注意すること

自然由来のものだから誰がたくさん飲んでも大丈夫、というわけではありません。

漢方薬に確かな薬効があり、医薬品である以上、強すぎる作用や副作用など
気を付けることが必ずあります。

副作用としては、薬疹と呼ばれる発疹、発赤、かゆみといった皮膚の症状がたまにあり、
これは服用をやめることですぐに収まります。
胃部不快感や胃もたれといった消化器系の症状や、
動悸・頻脈や興奮といった心臓系のものもあります。
初めての服用時だけでなく、長期服用する場合も気を付けなくてはいけません。

多量に飲んではいけない人、避けるべき人もいます。
まず、原料となる生薬に対してアレルギーがある方は、もちろん服用できません。

生薬の甘草は多くの漢方薬に含まれていますが、これを大量に服用すると、
血圧の上昇を招くことがあり、高血圧の方は服用に注意が必要です。

また生薬の麻黄にはエフェドリンが含まれているため、
ドーピング反応で陽性が出る可能性があり、スポーツ選手には御法度といえます。

さらに生薬の重複により、摂取過多となってしまう可能性があるため、
基本的に漢方薬を複数同時に服用することは避けたほうが良いです。

いずれの場合も、一番初めはご自分の判断だけで服用することなく、
医師、または薬局やドラッグストアの薬剤師にぜひご相談ください。

まとめ

さまざまな不快な症状を感じてはいるけど、病院にいくほどではない…
そんな時ほど漢方薬を試してみるタイミングかもしれません。

また風邪や胃痛といった一般的な病気だけでなく、
婦人系や下痢や便秘がちといった体質的なものなどをも
改善できる可能性を持っているので、試す価値はあるのではないでしょうか。

多少クセのある味やにおいがしますが、「良薬は口に苦し」で、
これがまた「ザ・お薬」といった風情を醸しており
糖衣でくるまり飲みやすくなっている西洋薬とは違った魅力といえます。

風邪薬をはじめ、頭痛薬や胃痛薬など、メジャーな医薬品も良いですが
漢方薬という手段も、選択肢のひとつとして覚えていていただけると幸いです。

まずはドラックストアにある、漢方薬のコーナーをぜひご覧ください。
きっと試してみたいお薬がみつかるはずです。

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