セルフメディケーション税制が導入されてしばらく経ちました。
これは、”健康の保持増進及び疾病の予防”を行った人に対する税の補助で
年間、自己と扶養する家族にかかった医薬品のうち、
12,000円を超えた金額に対して控除を受けることができる制度です。
簡単に言えば、健康であろうとし、病気を防ぐために頑張った人に対し
それにかかった費用をある程度は負担を軽くしますよ、という制度です。
”対象の医薬品に限られる”、”制限額がある”といった制限もありますが
これを利用すれば、少なからず経済的なメリットをもたらすのは確かです。
しかし”セルフメディケーション”とは、単なる税対策としてだけではなく
自分の人生や生活に、多大なメリットをもたらすものです。
今回、セルフメディケーションの大切さをご説明させていただきます。
セルフメディケーションとは
”セルフメディケーション”とは
「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」
として世界保健機関(WHO)に定義されています。
昨今、世界的にもセルフメディケーションが推進されており、
自発的な健康管理や、病気の疾患予防の取り組みが推奨されています。
個人の負担する医療費だけでなく、医療機関への負担も軽減し、
さらには”いつまでも働ける人”が増えるため、
国としての利益も膨大なものになっていくからです。
普段から人は、疲れた時や体調不良の際には
不足した栄養を取ったり、睡眠や休養を得るなどして回復をめざします。
これらはあくまでも”セルフケア”の範疇であり、
セルフメディケーションとは、病気の予防や軽度な疾病の治療のために
自分で医薬品を購入し服薬することを指しています。
セルフメディケーションの重要性
大昔から”体が資本”と言われてきました。
仕事をして収入や生きがいを得るのも、
趣味を楽しんだり、美味しいものを食べるにしろ
全ては健康な体と精神があって成り立つものだからです。
特に経済的な面では、健康であるかどうかが
生活の大きな分かれ目となっていきます。
健康であれば、何らかの仕事をすることで
収入を得ることが出来るのはもちろんですが
たとえ働かなくても、少なくとも出費はありません。
しかしなんらかの持病を抱えた場合、
働くことはもちろん難しく、
通院や投薬などが家計の負担となってしまいます。
そうなると、むしろ出費が増えるばかりで、
経済的にはマイナスとなっていくのです。
もちろん病気は仕方のないことです。
しかしセルフメディケーションをしっかり行うことで、
病気の発症や進行を防ぐだけでなく、
公的な補助や治療の新情報を得ることで
うまく病気と付き合いながら生活することができるのです。
単純に”病気にならない”ことを目指すだけが
セルフメディケーションの役割ではありません。
何らかの持病を抱える人こそ、
自分の健康を諦めずに管理する必要があるのです。
セルフメディケーションの補助機関
セルフメディケーションを行うにあたり、
当然その名の通り、自分自身が主体的に行う必要があります。
ただし医療や薬の知識を持つ医師や看護師、
そして薬剤師や登録販売者のサポートを受けることも重要です。
そのため、2021年8月から「地域連携薬局」と
「専門医療機関連携薬局」の認定制度が始まりました。
これは自分の健康づくりを強く意識する人を、
気軽に地域の薬局でサポートできるための体制です。
地域連携薬局とは、都道府県から認定を受けた薬局です。
医療機関等と薬局で薬物療法に関する情報共有を行い、
退院後や通院中の在宅医療をサポートしていきます。
専門医療機関連携薬局とは、”ガン”など特別な病気について、
その専門医療機関と治療方針を共有し、相応しい対応ができる薬局です。
ガンなどの病気を疾患しても、進行度や具合によっては
自宅療養に切り替えたり、人によっては仕事を続ける人も少なくありません。
そのような人にとって、より生活しやすく、
力になれる場所になれるかと思われます。
今の健康を維持したい、体調不良を少しでも良くしたい、
そう考えた時には、お近くの薬局で、
薬剤師や販売登録者にご相談してみてはいかがでしょうか。
セルフメディケーションの具体策
セルフメディケーションの初めの一歩は、
自分の健康状態に関心を持つことです。
毎日、しなければならないことに追われ、
とりあえず食べて寝ることの繰り返しになりがちですが、
体の不調の全ての原因を”疲れ”と”睡眠不足”で片付けるのは
危険がいっぱいです。
日常生活に支障をきたしたり手遅れになる前に
体に現れた”異常”に目をむけてみましょう。
人の体で異常が出やすいのは、主に目、肌、尿、便です。
目が充血し続けていないか、肌に異常な斑紋が現れていないか、
尿の色やにおい、一日の回数、そして便は色や出血の確認が大切です。
体調としては、息苦しさや長引く席は呼吸器系、
頻脈や胸の痛みなどは循環器系が心配です。
慢性的な腹痛や手足のしびれや、いきなり起こる頭痛など
ひそかに見逃せない兆候も多々あります。
そして、客観的には判断しにくいものではありますが
精神的な不調も重要な項目の一つです。
昨今はストレスを感じていることが当たり前となり
辛いことに慣れてしまっているケースもありますが
それは絶対に体が持たず、将来的にも不安が残ります。
(精神的な疾患を抱えた場合、回復に時間がかかることもあります)
そういった判断を適正に行うためにも、定期健康診断を受診しましょう。
またがん検診や乳がん検診、メタボ健診なども利用することで
病気の発見を早め、その進行を抑えることが可能になります。
高齢者はインフルエンザなどの予防接種も大切です。
さらに祖父母や両親、親戚など血縁者の過去歴も参照し、
それらの疾患は自分も可能性があることを意識しておきましょう。
セルフメディケーション税制の補足
税の対策としては、セルフメディケーション税制だけでなく
従来からあった医療費控除もあり、
そのどちらかを選択することになります。
市販薬の購入金額が多い方はセルフメディケーション税制を、
病院にかかることが多く、
医療費が年間10万円を超える方は医療費控除を受けると良い、
と一般的に言われています。
そしてセルフメディケーション税制を受けるには
前述の通り、所得税、住民税を納めていることだけでなく
予防接種や定期健康診断を受けていることが条件となります。
また、どの医薬品でもOKというわけではなく、
医師によって処方される医療用医薬品と
薬局やドラッグストア等で購入できる医薬品に転用された医薬品、
すなわちスイッチOTC医薬品(または同様の効能を有する医薬品)
に限られます。
対象のOTC医薬品には、識別マークとその文言が入っているので
簡単に見分けることができます。
主に”バファリン”などの頭痛薬や”パンシロン”などの胃腸薬、
”バンテリン”などの筋肉痛の医療薬や、”パブロン”や”ルル”などの風邪薬など
メジャーな製品が対象となっています。
ただし漢方薬やサプリメントは対象となりません。
まとめ
自己管理は快適な人生をおくる基本中の基本ですが
人は誰しも、病気になったりケガを負うリスクを抱えており
それらを完全に避けて通ることは難しいでしょう。
それでも出来る限り、毎日数分でもメンテナンスを行い、
自分の体に現れる兆候に気付き対処することで、
そののちの人生が大きく変わってくる可能性があるのです。
病気に対する正しい情報を入手し知識を身につけるためにも
異常を感じた際には自己判断せず、
医療機関や薬局の薬剤師など専門家の指導を受け
気軽にセルフメディケーションを習慣にしていただけたらと思います。