受験は「情報」がとても大切です。しかしコロナ禍のため、
情報がなかなか得られない方もいらっしゃるかもしれません。
そういった方のお役に少しでも立てるよう、
子どもたちの受験で得た学習に関する知識や、
合格に至るまでに有益だと感じた情報をまとめていこうと考えました。
モチベーションの維持の方法などメンタル的なことや、
実際に使用した参考書や問題集や学習方法が、
具体的にどのような効果(点数に結び付く等)があったか
本番だけでなく模試でやりがちな失敗など、
もう一度機会があれば活かしたかったことばかりです。
受験に絶対はないし、状況も刻々と変化しますが、
普遍的なものもきっとあるので、参考にしていただければと願います。
中学受験は親の受験?
子ども三人を中学受験させ、さまざまな情報を集めていた時、
ときおり(上の子から下の子まで何度も)耳にした言葉があります。
それは「中学受験は親の受験」です。
「子どもに寄り添い、一緒に頑張りましょう」というだけでなく、
むしろ親の情報収集力や子どもに対するコーチング能力、
問題集により子どもの能力や得手不得手を見極め、それを克服する勉強アイテムをみつけ
得点源を確保し欠点を補うためにすべき勉強内容を用意し、
それらを正しい時期にきちんと実行させる能力が必要、ということらしい。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
3人の子の受験を体験し、そうとは言い切れないものをずっと感じ続けていました。
もし、この言葉をまるまると信じ込んでしまっていたら、
たぶん合格を成しえなかったとさえ思えます。
親にできること・できないこと
もちろん親にできること、親にしかできないことは山ほどあります。
体調面を気遣い、生活リズムを整え、心身の健康を保つことは、
受験をする・しないにかかわらず、親の重要な仕事です。
特に子どもの性格に合わせ、たしなめたり励ますことでモチベーションを維持させたり
適度な息抜きや、不安な気持ちの解消など、メンタル的なサポートは必須になります。
学習面においても、本人に必要と思われる参考書や問題集を精選し用意したり、
テストや問題集の解答を客観的に見直すことで、
つまづきやすいところなどの失点パターンを本人の代わりに抽出することは
あまり時間のない受験生にとっては支えになるかもしれません。
(ただし本来は、この作業も本人が行うことが重要と思われるが)
以上だけでなく、合格までの道のりを、本人は勉強のみに集中できるようにと、
実に多くのサポートを行ってあげている様子が多くの保護者が見られます。
そして実際、それ無しでは合格は難しいのも確かといえます。
難関校とよばれる学校を受験するならば、なおのことです。
最後まで他人事だった子どもは
三人の受験を経験し、必ず見かけたのが、受験に対し驚くほど他人事な子どもの存在です。
塾だけでなく、学校でも何とはなしに受験組といわれるグループができるらしく、
志望校は違えども(むしろ違うからこそ)子どもたちの間でシンパシーを感じあうのか、
受験する子同士で、模試の結果や塾の課題のボリュームに対する愚痴など
「挑戦する者のみが抱える苦痛や興奮」を語り合っているそうです。
そんな中、他人事な子どもは、その輪に楽し気に加わってはいるが、
決して主体的に受験に参加しているわけではないのでした。
模試の結果で気になるものは点数や合否判定だけ。
塾などから提示された課題のみを行う(ときどきサボる)
勉強に対する拘束時間の長さや量に対する不満を常に抱えている。
「子どもなんだから、それが当り前じゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし御三家と呼ばれる学校や、倍率の高い学校に合格する子を何人も見ましたが
彼らは受験を、受験勉強を、自分のものとしてとらえている子が本当に多かったです。
自分の不足部分を自分が誰よりも理解しているので、やってもやっても足りないため、
保護者が息抜きをうながすケースもあるくらいでした。
良問と耳にすると宿題でなくても解いてみたり、テスト後の解きなおしも自発的。
別に彼らは、皆がカリカリと勉強に追われているわけではないのです。
(たまに落ちたらどうしよう、といった不安にとらわれている子もいるが)
習い事は続けたり、学校は学校で息抜きの場として楽しんだり
(たいていの中学受験生にとって学校の授業はのんびり過ごせる時間です)
大人でも難しいのでは?と思うほど、オン・オフの切り替えを上手にしていました。
辛いのも大変なのも、他人事チームとは変わらないが、どんなにキツくても
受験を他人に頼まれたもの、指示されたものとは扱っていないようにみえました。
もちろん行きたい学校があり、毎日、一日長時間、自分の意志でがんばり続けて、
その結果ダメな子もいます。
しかしそんな子も、他人事組と決定的に違うのは、進学してからなのです。
受験までより、受験後のほうが長い
受験日当日までは本当に長く感じ、サポートする保護者にとっては
「早く終わって(合格して)」と願うばかりかもしれません。
でも当り前のことだが、受験後のほうがはるかに長いのです。
主体的に受験に参加した子は、入ってからもそのモチベーションは衰えません。
自分の努力が成功に結び付くことを実感し、その努力を成しえる自信もあるからです。
息子の進学校においても、入ってからのほうがむしろ勉強に対する拘束時間は増えます。
何故なら息抜きだった学校は授業中でも集中を必要とするものとなり、
難易度も進度も公立校の比ではなく、インプットし続けなければならない生活となります。
そして要求される結果も高く、並みの理解力では対応するのが難しい状況に見えました。
入学後、保護者会後の茶話会などで、保護者同士が個人的な会話をする機会が得られ、
そこでは合格の喜びがまだ残っているためか
「どうやって乗り越えたか」、「とにかく大変だった」、
「まさか受かるとは思わなかった(このコメント実に多い)」という話題になります。
その際に主体的だったと聞いた子たちは、後期生(高校生)になっても、
学習だけでなく、学校のイベントや役員などを楽しんでいました。
そして次の獲物(大学受験)のために考え、行動していました。
しかし「文句ばっかり言ってたけど、とにかく尻を叩いてやらせた」とか
「塾にもお願いして、とにかく付きっ切りでがんばった」と聞いた子に関しては
受験期同様と思われるが、学校の課題の多さに文句を言い続けているそうです。
そして成績が低迷したり、学校に来なくなってしまう子もいました。
どの受験校、どの学年にも不登校の子が何人かいます。
くわしく確認しましたがいじめが理由ということはなく、
子どもが来なくなった友人から直接聞いたところ、とにかく授業についていけないとか、
優等生ではなくなるプレッシャーなどで人間関係も重く感じているらしいです。
(小学のことは超のつく優秀者だっただけに、劣等生になるのは想像以上に辛い)
受験で解放されたと思ったのに、まだ続くのかといった絶望を感じた子もいると。
入学後の学校がどんなところか理解した上で、
強く入学を望んでいたのは、残念ながら本人ではなかったのかもしれません。
そして不本意ながら公立中に通うことになった主体的な子どもはどうなったのか。
努力が実を結ばないと知って諦めると思いきや、たいていは真逆です。
子ども心にリベンジを誓うのか、公立中では上位をキープし
高校受験では、中学受験での反省をもとに用意周到にチャレンジしていきます。
結果、国立大付属や超難関高校に合格していました。
驚きましたが、塾の先生いわく、よくあることというか、自然な流れらしいです。
ただしここでも他人事だった子は違うそうです。
「受かるからやれって言われたからやったのに、ダメだったじゃん」
(実際そう言ったそう)と落ちたことも他人のせいとし、
勉強に対する努力は無駄なものという価値観を持ってしまうのだと。
結果、高校受験にもなんの希望も意気も持たないまま挑むことになります。
最後に
中学受験では確かに親がすること、できることは多いです。
しかし長い目で見て、受験を決めたとき、壁にぶつかったとき、苦しんでいるとき、
あくまでも子ども本人の受験だということを実感させたほうが良いと思われます。
「子どもには勉強の意義なんて理解できない」
「受験は自分のためなんて、わかってるはず」
そういった先入観なく、学べる幸せ、知識を得ることに対する充足感を
繰り返し子どもたちに伝えていくことが重要に思えた体験でした。
何よりも、受験に限らず、人生の何事においても主体的に生きるように
子どもを導いてあげるのが、親の一番の役目だと考えるに至りました。